
FAQシリーズ:Timegated®ラマン測定で正しいTimegate範囲(遅延範囲)を選ぶには?
この「FAQシリーズ」では、Timegated®分光器とその測定に関するよくある質問を、長文を読むことなく簡潔にご紹介していきます。
Timegated®ラマン測定とは?
Timegated®ラマン測定では、時間分解スペクトルが得られます。つまり、スペクトルデータには時間的な情報が含まれており、測定やデータ処理の設定を最適化する際にはこの時間要素も考慮する必要があります。
一度、特定のサンプルや測定条件に対してパラメータを最適化すれば、通常それ以降は大きな調整は必要ありません。
タイムゲート範囲(遅延範囲)の選び方の基本
以下の図は、信号強度、ラマンシフト、ディレイ(遅延)という3軸で表された時間分解スペクトルの例です。
ラマン信号だけに興味がある場合は、ラマン応答が含まれるディレイ範囲だけを最終結果に含めます。
逆に、蛍光特性も解析したい場合は、より広いディレイ範囲の情報を含めることも可能です。
今回は、「ラマン信号のみを解析対象とし、蛍光干渉を最小限に抑える」ことを前提に話を進めます。
Timegated® 分光計によって生成された時間分解スペクトル。
タイムゲート範囲(遅延範囲)の見つけ方
多くのサンプルでは、ラマン応答はシグナルパルスの前方に突起のように現れます。これが、最適なディレイ範囲を見極める最初の手がかりになります。
さらに詳しく見るには、「3Dスペクトル」の側面図(delay方向からの投影)を見ると、ラマン信号の位置がよりはっきりと確認できます。
難しいサンプルの場合はどうする?
蛍光が強かったり、ラマン信号が弱いサンプルでは、ラマン応答が視覚的に分かりにくいこともあります。
その場合は、まず蛍光が少なく、ラマン応答が強い既知のサンプル(ここではシクロヘキサン)を測定します。このサンプルでラマン信号が現れる遅延範囲を確認し、その範囲を他のサンプルにも適用することで、効率よく正しい範囲を決められます。
仮想ゲーティング(Virtual Gating)の活用
蛍光の影響を除去するためには、遅延範囲の後方を意図的に除外する手法「仮想ゲーティング」が有効です。
ただし、ラマン信号と蛍光が時間的に重なることもあり、ラマン範囲の一部を犠牲にする必要がある場合もあります。この場合、多少ラマン信号を失っても、ノイズを減らすメリットが大きくなります。
以下の図では、2つのディレイ範囲が色分けされています:
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赤色の範囲:ラマン情報がほとんど含まれておらず、通常は除外。
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黄色の範囲:ラマン情報も含まれるが、蛍光の干渉もあるため、難しいサンプルでは除外を検討。
最適な遅延時間の範囲は、蛍光の少ない既知のリファレンスサンプルを使って、初期的に推定することができます。黄色の遅延範囲を測定から除外すると、ラマン信号の一部も除外されることになりますが、蛍光の重なりを回避するためには、この処置が必要になる場合があります。
リファレンスサンプルを使って定義した遅延時間の範囲は、その後、他の新しいサンプルにも適用することができます。
まとめ:遅延範囲の設定とその応用
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参考サンプル(例:シクロヘキサン)でラマン応答の位置を確認
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そのディレイ範囲を他のサンプルにも適用
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必要に応じて仮想ゲーティングで調整
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Timegated®のスペクトル処理ソフトウェアで、後からディレイ範囲を除外・編集可能
最適な遅延範囲を決めることは、蛍光の干渉を最小化し、純粋なラマンスペクトルを得るための重要なステップです。測定条件を一定に保てば、サンプルごとに範囲を大きく変える必要はありませんが、サンプルの特性に応じて微調整することで、さらに高品質なデータが得られます。
ご質問や具体的な設定についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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詳細については、ウェブサイトもご参照ください。