藻類培養におけるリアルタイム監視:
Time-gatedラマン分光がROBAプロジェクトで示した可能性
微細藻類は、炭素の回収、再生可能な原材料の生産、そして多様な産業における持続可能な新製品の創出など、計り知れない可能性を秘めています。
しかし、有望な研究成果を産業レベルの現実へとスケールさせるためには、ひとつの重要な要素が欠かせません。それは、リアルタイムで監視・制御可能な、信頼性の高い培養システムです。
まさにこの課題に取り組むために立ち上げられたのが、ROBA(Robust Algae Systems)プロジェクトです。
Business Finland Co-Research の助成を受けたこのプロジェクトは、研究機関と産業パートナーが連携し、藻類栽培システムの強化に取り組みました。その目的は、2030年までに微細藻類が炭素回収やスケーラブルなバイオベースのバリューチェーンに大きな役割を果たせるようにすることです。
微細藻類培養の未来を形作るROBAのワークストリーム
ROBAは4つのワークパッケージで構成されており、特に産業スケールでの実現性を支える重要な領域に焦点を当てて、核となる開発が進められました。
1.二酸化炭素固定を改善する光バイオリアクター設計
本プロジェクトでは、CO₂ 回収効率と生産性の向上を目的として、フォトバイオリアクターの設計および運転パラメータを評価しました。
具体的には、CO₂ 濃度、気泡サイズ、スパージング面積といった要素が検討されています。
2.汚染やプロセス異常を検出するオンライン監視
藻類培養における大きな産業上のボトルネックのひとつは、実用的かつ信頼性の高いモニタリング手法がいまだ十分に確立されていない点です。
ROBA ではこの課題に対し、大規模藻類培養向けのオンラインモニタリング手法と、異常発生時の回復戦略の開発に取り組みました。
3. 用途、持続可能性、マーケット適合性の検討
ROBA ではさらに、藻類バイオマスの組成評価を行うとともに、規制、消費者受容性、技術経済的な持続可能性についても検討しました。これにより、技術開発と商業的現実を結びつける取り組みが進められました。
モニタリング の課題とTimegateの役割
バイオプロセス産業全体において共通する真実があります。それは、測定できないものはスケールできないということです。
藻類培養では、フィードバックの遅れや不十分なモニタリングが、異常の早期検出やプロセスの復旧、スケール時の安定した制御を困難にします。
ROBAのレポートでは、藻類培養におけるより良いプロセス監視方法と、ニア-クラッシュ状態からの回復戦略の必要性が強調されています。
Time-gatedラマン分光がもたらす新たな可能性
ROBAの最終レポートでは、従来の連続波(CW)ラマンとTime-gatedラマンの比較が行われました。
両者ともサンプル間の違いは捉えられましたが、Time-gated方式ではバイオマス量の変化に対応したピーク変動がより明瞭に観察されました。

レポートによれば、特に 1159 cm⁻¹ および 1524 cm⁻¹ のピークは、Time-gatedラマンスペクトルにおいてバイオマス濃度との相関が示されました。
※補足(日本語版編集部)
1159および1524 cm⁻¹付近のピークは、カロテノイドに特有のC–CおよびC=C伸縮振動として広く報告されています。Chlorellaに含まれるカロテノイドが532 nm励起下で共鳴ラマン条件となることを考えると、本スペクトル変化は細胞内カロテノイド量に由来する可能性が高いと推察されます。
結論:堅牢な藻類培養には連携と高度な計測が不可欠
ROBAプロジェクトは、スケーラブルな藻類培養の実現には、リアクター設計に加えて高度なプロセスモニタリングが重要であることを示しました。
安定したオンラインデータ取得は、異常の早期検出やプロセス理解の深化に寄与します。
Time-gatedラマンは、蛍光の影響を受けやすい培養環境においてもラマン解析を可能にする選択肢のひとつとして、今後のバイオプロセス監視に貢献する可能性があります。
本プロジェクトで示されたTime-gatedラマンの有効性は、藻類培養に限らず、蛍光干渉が課題となるさまざまなバイオプロセスや材料プロセス監視への応用が期待されます。
※ROBAプロジェクト最終レポート(英語版PDF)をご希望の方はお問い合わせください。