
卓上型 qNMR を用いた生物医薬品に関連する非イオン性界面活性剤添加剤の定量に関する研究紹介
生物医薬品の品質を安定に保つために欠かせない非イオン性界面活性剤(NISEs)は、製造や輸送の過程で有効成分をストレスから守る重要な添加剤です。
代表的なポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート80(PS80)、ポロキサマー188(P188)の正確な添加量を管理することは重要です。本研究では、60 MHz 卓上型定量 NMR(qNMR)を用い、これらの添加剤を簡便かつ信頼性高く定量できる手法を開発されています。
モノクローナル抗体、抗体薬物複合体、Fc 融合タンパク質といった多様な生物医薬品有効成分を含む製剤中でも、0.025% w/v 以下の低濃度で正確に測定可能であることを実証。ユーザーフレンドリーな本手法は、製薬開発から品質管理(QC)まで幅広く応用可能です。
Quantification of Biopharmaceutically Relevant Nonionic Surfactant Excipients Using Benchtop qNMR
要旨(訳)
非イオン性界面活性剤添加剤(NISEs)は、生物医薬品の製造、輸送、保管の過程で、バイオ医薬品有効成分 が受けるストレスを軽減するために一般的に添加される。製造工程においては、NISEs はストック溶液をタンパク質製剤に直接希釈して加えられるため、その正確な添加は医薬品の品質と安定性を維持し、ひいては患者の安全を確保するうえで極めて重要である。これは、特に代表的な NISE であるポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート80(PS80)、およびポロキサマー188(P188)に当てはまる。現代の製薬パイプラインにおいて生物医薬品の多様性が増していることから、こうした NISEs を生物医薬品に関連する条件下で迅速かつ確実に定量できる、便利でユーザーフレンドリーな分析技術を開発・導入する必要性が高まっている。
そこで本研究では、破壊を伴わず操作が容易な分析手法である 60 MHz 卓上型定量 NMR(qNMR) を用い、PS20、PS80、P188 をそのような条件下で定量することを試みた。具体的には、卓上型 qNMR が以下のことを可能にすることを示した。
バイオ医薬品の製造における原薬製剤工程で用いられるものに相当する、模擬的な PS20、PS80、P188 のストック溶液を定量すること。
ヒスチジン、スクロース、さらに 3 種類の バイオ医薬品有効成分(モノクローナル抗体、抗体薬物複合体、Fc 融合タンパク質)を含む製剤中で、これらの NISEs を目標濃度(0.025% w/v 以下)またはそれ以下で定量すること。
本研究の結果から、卓上型 qNMR は、製薬業界において重要な NISEs を簡便かつ確実に定量できる、目的適合型で信頼性が高く、ユーザーフレンドリーで環境にも優しい分析手段であることが示された。さらに、卓上型 qNMR は、さまざまな バイオ医薬品有効成分 の存在下における他の添加剤成分の定量にも応用可能であり、製薬開発および製造拠点における分析・品質管理(QC)ラボでの日常的な導入にもつながる可能性を有すると結論づけた。
論文の全文はこちらをご覧ください。 https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.analchem.4c00422