AI活用の自律型フロー反応最適化システム x Spinsolve卓上NMR

AI×フロー合成×卓上NMRによる次世代ポリマー合成の最前線
ポリマー材料開発における自動化・高効率化を実現するため、AI支援の自己最適化”フロー反応システム”と”卓上NMR”を用いてリアルタイム分析を統合した革新的合成プラットフォームが開発・実証されています。
最適化反応プラットフォームの最近の進展を受けて、Nick Warren氏(University of Leeds)とPatrick Theato氏(Karlsruhe Institute of Technology)のグループに所属するAlexander Grimm氏らが発表されており、Spinsolve 60 MHz Ultra ベンチトップ NMR 分光計で記録したプロトンおよびフッ素の NMR を用いて、最適な反応条件を見つけ、得られた情報を検証した自動反応プラットフォームについて説明しています。
論文の全文はこちらをご覧ください。 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/marc.202500264
フロー反応の利点
フロー合成は、バッチ反応と比較して以下の点で優れています:
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反応条件の安定性と再現性:高い表面積/体積比により、温度や圧力が均一に保たれる。
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熱効率とスケーラビリティ:迅速な熱交換と容易なスケールアップが可能。
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オンラインモニタリングとの親和性:連続流を利用してリアルタイム分析を実現。
RAFT重合をフロー反応で行い、精密制御されたポリマー合成を実行。
卓上NMRの利点と応用
合成中の反応進行度をリアルタイムに把握するため、Spinsolve60MHz 卓上NMR(1Hおよび19F NMR)が活用されました。
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反応中のモノマー変換率のオンライン評価(1H NMR)
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官能基修飾比率の高精度な定量(19F NMR):フッ素含有アミンでのPPM(ポストポリマー修飾)において、修飾後ポリマーの組成比を95%以上の精度で再現可能とした。
このように、NMRをフロー合成に統合することで、反応・修飾の定量制御を可能にした。
AIの役割と貢献
AIは反応条件の最適化に中心的な役割を果たしています。具体的には:
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TSEMOアルゴリズムを用い、モノマー転化率と分子量分布(Đ)の多目的最適化を自動で実行。
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初期実験に基づき反応温度や滞留時間を動的に調整して、最短12回の試行で最適条件(94°C、56分)を出力。
AIを活用した、この自律型フロー合成は、初期の実験条件さえ設定すれば、“ラボの自動運転化”を一定程度実現したものであり、高効率かつ高精度な合成反応を可能にします。また、フロー合成で導き出された反応条件をそのままバッチ反応に展開することも容易になるため、これまで以上に実験のスピードアップやスケールアップにつながりそうです。