
近年、製薬業界では治療用タンパク質やワクチンなど、バイオ医薬品の開発が急速に進展しています。これらの医薬品は水溶液状態では分解しやすく、保存安定性の確保が大きな課題となっています。そのため、凍結乾燥(フリーズドライ) が、長期保存のために不可欠な技術として広く利用されています。
従来の凍結乾燥は「バッチ式」という方式で、何千ものバイアルを一括処理します。しかしこの方法は、処理時間が長く、設備が大規模で高コスト、しかも品質の一貫性を保つのが困難で、抜き取り検査だけでは全体の品質保証が難しいという問題があります。
その背景には、次のような問題があります:
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凍結工程がバイアルごとに異なる
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熱分布が不均一で、製品温度がばらつく
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結果として、乾燥速度や製品品質にばらつきが出る
こうした課題を解決するために登場したのが、「連続凍結乾燥」という革新的な製造技術です。この技術は、バイアルを一つずつ連続的に処理することで、
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処理時間の大幅短縮
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製品間の品質ばらつきの低減
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製造設備の省スペース化とコスト削減
を実現しています。そしてこの連続凍結乾燥技術を開発・商用化しているのが、ベルギーのRheaVita社です。彼らの技術は2019年に「American Pharmaceutical Review」誌にも掲載され、当時から注目を集めていました。
そして2025年3月、ついに RheaVita本社施設にGMP(医薬品の適正製造基準)システムが導入され、商用生産体制への対応も整いました。
これにより、連続凍結乾燥技術が研究開発段階を超え、信頼性の高い製造プロセスとして確立されたことを示す重要なマイルストーンです。
連続スピン凍結乾燥は、従来の製造課題を解決するだけでなく、将来的な医薬品製造の「リアルタイム品質モニタリング(PAT)」への対応にも適した技術です。特に、熱画像による製品温度モニタリングなどの最先端技術を取り入れることで、バイアルごとの品質管理がリアルタイムに可能になりつつあります。
今後、バイオ医薬品の製造における新しいスタンダードとして、この連続凍結乾燥技術が広がっていくことを期待します。
下記の画像リンクから、American Pharmaceutical Reviewで2019年に発表された、"Product Temperature Monitoring and Control via Thermal Imaging during Continuous Freeze-Drying of Pharmaceutical Unit Doses"の全文をご覧いただけます。
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