
医薬品に開発における固体形態の重要性結晶多型の簡便な同定法
医薬品の成分(API)は、同じ化学式を持ちながらも、異なる物理的性質を持つ固形状態をとることがあります。これを「多形(ポリモーフィズム)」と呼びます。
たとえば、炭素でも、ダイヤモンド・黒鉛・フラーレンといった違う形態が存在します。
同じ炭素でも、構造が違うだけでまったく性質が変わる──これと同じことが医薬品にも起こり得ます。
多形が変わるとどうなるか?
-
溶けやすさ
-
安定性
-
経口吸収率
-
臨床試験での効果・副作用
これらが大きく変わる可能性があります。つまり、最適な固体形態を見極めて選び抜くことが、薬の安全性と有効性を高めるカギなのです。
原薬の形態をどうやって見分けるのか?
従来、次のような技術が使われてきました。
-
示差走査熱量測定(DSC)
-
熱重量分析(TGA)
-
X線粉末回折(XRPD)
-
ラマン分光法 など
中でもラマン分光法は、薬の化学的同一性や、結晶多形の識別にとても役立つ方法です。
しかし課題もありました。それが「蛍光」です。蛍光により微弱なラマン信号がかき消されてしまうことがよく起こります。
Timegatedラマン分光法が登場!
そこで注目されているのが、Timegatedラマン分光法。
これはパルスレーザーと超高速ゲーティング技術を組み合わせることで、
蛍光を時間分解して除去し、クリアなラマンスペクトルを得る画期的な方法です。
インドメタシンとピロキシカムの測定例
インドメタシンの場合
インドメタシンは、炎症や痛みを和らげる薬です。
これにはα型、β型、γ型、δ型、ε型、ζ型、η型など、多くの多形が存在します。
アモルファス インドメタシンを測定したところ…
-
従来のCWラマン(785 nm)→蛍光で信号が消えてしまった 下記 (a)
-
Timegatedラマン(532 nm)→クリアなラマンバンドを検出!下記 (b)
図:インドメタシンを従来の連続波ラマン(左)とTimegatedラマン(右)で比較したスペクトル
さらに、蛍光を除去した美しいデータも得られました。
図:アモルファスインドメタシンの生データから蛍光補正後のデータ
ピロキシカムの場合
ピロキシカムも関節炎治療に使われる薬で、4種類以上の多形と一水和物、アモルファス形態が存在します。
Timegatedラマン分光法を使うことで、I型、II型、一水和物を明確に識別することができました!
図:Timegated®ラマン分光法によるピロキシカムI型、II型、および一水和物のスペクトルの比較
図:ピロキシカム一水和物の3D蛍光データも取得し、ラマンスペクトルとの関係性を解析。
まとめ
医薬品の原薬の形態を正確に識別することは、薬の効果や安全性に直結します。そのためには、蛍光の影響を除去できる新しい測定技術が不可欠です。
今回紹介したTimegatedラマン分光法は、
-
サンプル前処理不要
-
蛍光干渉を簡単に排除
-
医薬品開発、医薬品製造、保存時のモニタリングにも活用可能
というメリットを持ち、医薬品研究・開発に新たな可能性をもたらします。 資料のダウンロードは、こちらから💁
Timegateラマン分光システムの情報と、デモの申し込みはこちらよりどうぞ!