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NIR光駆動型オンデマンド薬物送達のためのリポソームナノセルロースハイドロゲル

作成者: Hori|May 13, 2025 7:30:00 AM

本研究では、近赤外線(NIR)光によってオンデマンドで薬物放出が可能な、リポソームナノセルロースハイドロゲルを用いた新しいドラッグデリバリーシステムが紹介されています。このシステムでは、静電相互作用を利用して、ハイドロゲル内に安定で長時間持続する貯留型の薬物リザーバーを形成しています。

特定のNIR光照射を行うことで、温度感受性リポソームからカプセル化された薬物が放出され、その放出量は光照射の強さやハイドロゲルの厚さによって調整可能です。この生体適合性に優れた二重プラットフォームは、局所的かつ個別化された薬物投与の有望な手段を提供します。

本研究では、NIR光照射の前後におけるアセチル化セルロースナノファイバー(aCNF)ハイドロゲルの分析に、Timegated® ラマン分光法(TG-Raman)が使用されました。各測定には約200 mgのaCNFサンプルが用いられ、Timegate社のPicoRaman装置(532 nmパルスレーザーおよびCMOS-SPAD検出器搭載)を使用し、非接触プローブによりレーザー出力約80 mW、測定時間30分で実施されました。データ処理にはスムージング、ベースライン補正、正規化が含まれます。

TG-Raman分析により、光照射の前後でaCNFサンプルのスペクトルにおいて共通する特徴的なピークが確認され、ナノセルロースの骨格構造や特定のセルロース結合に対応していることが示されました。

TG-Ramanを用いる利点として、NIR光照射によってaCNFの化学構造に変化が生じないことが明確に確認され、この結果は薬物放出過程においてハイドロゲルマトリックスが安定であることを証明する重要な知見となりました。

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論文タイトル:「Harnessing liposomal nanocellulose hydrogel for NIR-light driven on-demand drug delivery」
掲載予定誌: Journal of Carbohydrate Polymer Technologies and Applications
著者: Puja Gangurde、Zahra Gounani、Jacopo Zini、Roberta Teixeira Polez、Monika Österberg、Patrick Lauren、Tatu Lajunen、Timo Laaksonen

要旨

刺激応答性ナノ粒子は、外部刺激によって薬物放出を制御できることから注目を集めていますが、生分解性や毒性といった課題がその応用を妨げています。本研究では、光活性型リポソームとセルロースナノファイバーハイドロゲル(CNF)を統合することで、薬物分子を保護し不要な漏出を防ぐ、制御放出型のオンデマンド局所投与システムを開発しました。カチオン性リポソームとナノセルロースの界面相互作用を調べた結果、リポソームは均一に分散していないものの、強い静電相互作用とファイバー構造によってハイドロゲルに結合しており、貯留型薬物リザーバーシステムを形成していることが示されました。

薬物放出の最適化に向けて、ハイドロゲルの厚さと光照射量を評価しました。近赤外線光(808 nm、1 W/cm²)で活性化すると、温度感受性リポソームの脂質二重膜内に含まれる光感受性物質が熱を発生させ、リポソームが透過性を持ち、薬物が放出されます。

光照射量20 J/cm²の低照射では最大50%、80 J/cm²の高照射では最大80%の薬物放出が観察され、このシステムの高い感度が明らかとなりました。この二重プラットフォームは、ナノセルロースの生体適合性と光応答性リポソームの可変性を兼ね備えており、オンデマンド薬物送達における有望なアプローチとして、個別化医療への大きな可能性を示しています


 

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