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なぜTime-gatedラマンはS/Nが良いのか。

作成者: Timegate|Feb 3, 2026 12:56:53 AM

ラマン分光では、信号強度そのものよりも S/N(Signal-to-Noise ratio) が測定の成否を決める。
特に高温測定や蛍光の強い試料では、バックグラウンドが支配的になることが多い。

ここでは、下図に示す 従来のCW ラマン(連続波)と Time-gated ラマン(時間ゲート) の比較を通して、S/N の違いを時間軸という観点から紹介します。

 

連続波ラマン:積算時間の光を全て検出する測定

 

従来の連続波ラマン分光では、レーザーは連続的に照射され、一定時間(T0〜T1)内に検出系へ入射した光を時間的な区別なくすべて積算します。

 

 

      • CWラマン信号は連続的に発生する

      • 同時に、熱輻射・環境光、(自家蛍光)といった背景光も常に存在する

このとき検出される信号は、

  • ラマン信号の積分

  • 背景光の積分

の総和であり、時間的に区別されない。その結果、背景が強い条件では S/N は悪化してしまいます。

 

 

Time-gatedラマン:ラマンが生じる”瞬間”だけを見る

 

 

Time-gatedラマンでは、極短パルスレーザーを用い、検出器を極短時間(数十ピコ秒〜ナノ秒)のみ開いて信号を取得します。

ラマン散乱は誘起双極子に由来し、レーザー電場にほぼ瞬時(fsスケール)に応答して発生します。
一方、熱輻射、自家蛍光、環境光といった背景光は、連続的、あるいは寿命の長い発光成分であることが多いです。

そのため、パルスレーザー照射直後の短時間のみを検出することで、ラマン信号はほぼすべて取得できる一方、背景光はごく一部しか取得されない ・ 短時間ゲートによりその多くを排除できる状況(上図)が生まれ、高いラマン/バックグラウンド比が得られます。

Time-gatedラマンは信号そのものを増やす手法ではなく、「見るべきでない時間を意識的に捨てる」測定によってコントラストを向上させていると言えます。

 

繰り返し周波数の重要性


Time-gated Raman は、ラマンフォトンの数そのものを増やす手法ではありません。

ゲート時間が非常に短いため、1パルスあたりに検出されるラマンフォトンは少なくなります。

しかし、同じ平均パワー・総照射時間で比較すれば、線形ラマン散乱の範囲では、 一般論として、パルス光でも連続波(CW)光でも総ラマンフォトン数は、ほぼ同じです。

一方で、短時間ゲートにより背景光は大幅に抑制されるため、S/N は改善します。

そのため、実用的な S/N を得るには、高い繰り返し周波数で信号を積算し、十分なフォトン数を確保することが不可欠です。

タイムゲートとパルスレーザーの繰り返しによる積算の両方を組み合わせて初めて、Time-gated ラマンの S/N 改善の効果が現れます。

このような測定では、短い時間幅の信号を高い効率で検出できる検出器が必要となるため、CMOS- SPAD(Single-Photon Avalanche Diode) の高速・高感度検出器が有効となります。

 

 

 

まとめ

  • 連続波(CW)ラマンは、時間的選別は行わず、積算時間内に検出器に届いた光を全て積分する測定

  • Time-gated ラマンは「ラマンが発生する瞬間」だけを時間的に選択して測定

  • S/Nの差は瞬時強度の違いによるものではなく、どの時間成分をどれだけ積分しているかの違いから生じる

Time-gatedラマンでは、パルス照射を繰り返すことで“必要な時間成分だけ”を選択的に積算しています。